アーユルヴェーダを、今どう読むか——科学、安全性、老いと星の話

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古くから続いているものを前にすると、二つの態度に分かれやすくなります。

長く残ってきたのだから正しい、と信じること。

科学ではないのだから意味がない、と遠ざけること。

けれど、そのどちらかだけを選ばなくてもよいのだと思います。

アーユルヴェーダには、人間の身体と暮らしを長い時間見つめてきた知識があります。同時に、現代の研究でまだ確かめられていないことや、安全性に注意しなければならない製品や方法もあります。

では、今を生きる私たちは、この古い医学をどのように読めばよいのでしょう。

これは、アーユルヴェーダから距離を置くための問いではありません。

Vayuは、身体と季節、食事と心、毎日の時間を切り離さずに見るアーユルヴェーダの思想が好きです。好きだからこそ、何でも効くものに見せたり、都合のよい研究だけを並べたりせず、分かっていることと分かっていないことを丁寧に分けたいと考えています。

1918年刊行のインド薬用植物図譜に描かれた植物
受け継がれてきた植物の知識と、今確かめられていることを、同じものにしない。
目次

伝統の説明と、研究の結果を分ける

アーユルヴェーダでは、三つのドーシャの偏りを見て、食事、生活、植物を用いた製剤、身体への施術などを組み合わせます。

これは、アーユルヴェーダという体系の中では一つのまとまりを持っています。

一方、現代の臨床研究では、どのような人に、何を、どのくらい使い、何と比較し、どの結果が変わったのかを調べます。

「アーユルヴェーダに効果があるか」という大きすぎる問いには、簡単に答えられません。

生活全体を扱う伝統と、一つの製剤や処置を切り分けて検証する研究では、見ている単位が違うからです。

しかし、その違いは、研究しなくてよい理由にはなりません。

効果をうたうなら、何が、誰に、どの程度役立ち、どんな害が起こりうるのかを確かめる必要があります。

研究されているものはある。でも、全体の証明ではない

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、アーユルヴェーダの製剤や方法について、よく設計された臨床試験はまだ少ないとしています。

例外的に比較的規模の大きい研究として、変形性膝関節症のある440人を対象に、二つのアーユルヴェーダ製剤、グルコサミン、抗炎症薬セレコキシブを比較した試験があります。この試験では、四つの群で痛みと身体機能に似た改善が見られました。一方、参加者の28%が途中で離脱し、アーユルヴェーダ製剤の群では、症状を伴わない肝酵素値の上昇によって中止した人もいました。研究者も、追加の安全性評価が必要だとしています。

興味深い結果です。

けれど、一つの試験で、アーユルヴェーダという医学体系全体の効果が証明されたわけではありません。特定の製剤について得られた結果を、別の病気、別の製品、別の施術へ広げることもできません。

関節リウマチについても小規模な試験がありますが、人数は限られています。

研究があることと、答えが出たことは違います。

アシュワガンダは、どこまで分かっているのか

近年よく知られるようになった植物に、アシュワガンダがあります。

ストレス、不安、睡眠などへの作用が研究され、サプリメントとしても広く販売されています。

睡眠についての2021年の系統的レビューとメタ解析では、五つの無作為化比較試験、合計400人の結果がまとめられました。全体では小さな改善が認められ、とくに不眠のある人で効果が大きい傾向がありました。

ただし、研究ごとの差も大きく、参加者数も十分とは言えません。使用された抽出物、量、期間も同じではありません。長く使った場合の安全性についても、まだ分からないことがあります。

「研究で差があった」は、「誰が飲んでも眠れる」と同じではありません。

植物由来であることも、副作用がないことを意味しません。体質、妊娠、持病、服用している薬によって注意点は変わります。

アシュワガンダは、古い伝統と新しい市場が重なる場所にあります。だからこそ、期待だけでなく、研究の大きさと限界まで一緒に見る必要があります。

「免疫力が上がった」という言葉を読む

ラサーヤナの代表的な食品として紹介されることのあるチャワンプラッシュには、アムラなど複数の材料が使われます。

子どもを対象にした研究では、感染やアレルギーに関連する症状、欠席日数、体力や生活の質などが調べられました。702人が無作為に割り付けられ、627人が研究を完了しています。

数字だけを見ると、大きく確かな研究に見えます。

しかし、参加者が何を摂取しているかを本人や家族が知っているオープンラベル試験で、症状や体力の一部は保護者の日誌によって評価されました。また、著者の一部はチャワンプラッシュを製造販売するDabur Indiaの社員です。

これは、結果がすべて誤りだという意味ではありません。

ただ、「子どもの免疫力を高めることが証明された」と結論するには慎重さが必要です。

研究を読むときは、人数だけでなく、比べ方、測り方、資金や製品との関係も見る。伝統医学に限らず、健康情報を受け取るときの大切な習慣です。

「自然なもの」にも安全性の問題はある

アーユルヴェーダの製品には、植物だけで作られたものもあれば、伝統的な製法の中で金属や鉱物を用いるものもあります。また、製造過程で意図せず混入する場合もあります。

鉛、水銀、ヒ素などを含む一部製品による健康被害は、実際に報告されています。

2021年の系統的スコーピングレビューでは、過去約20年間に報告されたアーユルヴェーダおよびシッダ医学の製剤に関連する重金属中毒として、220例が抽出されました。そのうち鉛が156例、水銀が47例、ヒ素が11例でした。

これは、アーユルヴェーダ製品がすべて危険だという話ではありません。

しかし、「伝統的な浄化法を経ているから必ず安全」「自然療法だから副作用がない」とも言えません。製品ごとに原料、製造管理、成分検査、販売経路が違います。

海外から購入した製品では、日本で承認された医薬品と同じ品質、有効性、安全性の確認が行われているとは限りません。

ハーブと薬は、別々にはたらくとは限らない

ハーブやスパイスは、食品として親しまれている一方、量や抽出方法によっては薬理作用を持ちます。

処方薬と一緒に使ったとき、薬の分解や吸収に影響したり、作用を強めたり弱めたりする可能性があります。アーユルヴェーダで用いられるすべての植物について、相互作用が十分に調べられているわけではありません。

だから、「相互作用が証明されていない」ことを、「安全が証明されている」と読み替えることはできません。

治療中の病気がある人、複数の薬を服用している人、妊娠・授乳中の人、手術を控えている人は、製品名と成分を医師や薬剤師へ伝えることが大切です。

アーユルヴェーダを選ぶことと、必要な医療を中断することは別の話です。

日本で使うときに知っておきたいこと

インドにはアーユルヴェーダの医療教育と資格制度がありますが、その資格は日本の医師免許ではありません。

日本国内には、アーユルヴェーダという名称の国家資格はありません。診断、治療、医薬品の販売、マッサージなどは、それぞれ日本の法律と資格制度の範囲で考える必要があります。

海外の医薬品を個人で輸入することは、すべて禁止されているわけではありません。厚生労働省によると、自己使用に限り、一定の範囲で認められる場合があります。

ただし、個人輸入したものを他人へ販売したり、譲ったりすることはできません。製品によっては輸入確認の手続きや、医師の処方の確認が必要です。

「現地では普通に売られている」「有名な先生が使っている」ということは、日本で安全性や有効性が確認されていることを意味しません。

人は、昔から老いたくなかった

アーユルヴェーダには、ラサーヤナと呼ばれる領域があります。

生命を養い、活力や記憶、身体の働きを保ち、健やかに年齢を重ねることを目指す伝統です。植物や調合物だけでなく、食事、行動、休息なども含む広い考え方として伝えられてきました。

ラサーヤナは、「古代のアンチエイジング」と紹介されることがあります。

確かに、老いを遅らせたい、長く元気でいたいという願いは共通しています。けれど、ラサーヤナと現代の老化研究は同じものではありません。

現在のジェロサイエンスは、細胞老化、慢性炎症、代謝、DNAやエピジェネティクスの変化などを測定し、健康寿命を延ばせるかを調べています。一方、ラサーヤナは、古典の身体観と生命観の中で組み立てられたものです。

一部の植物や製剤について、抗酸化作用、炎症、テロメラーゼなどを調べた研究はあります。しかし、試験管や動物で得られた結果、少人数の人で変化した指標、実際に人が若返ったことは、それぞれ違います。

ラサーヤナが人間の老化を逆転させると証明されたわけではありません。

それでも面白いのは、老いへの関心が、現代の長寿産業によって突然生まれたものではないことです。

古代インドにも、現代の研究所にも、「できるだけ長く、この身体で生きたい」と考える人がいる。

答えは違っても、問いは驚くほど長く続いています。

アーユルヴェーダとジョーティッシュは、同じものではない

ジョーティッシュは、インドで発達した天文・暦・占星の知識です。天体の動きを読み、暦を作り、儀礼や生活の時期を考えるために用いられてきました。

アーユルヴェーダとジョーティッシュは、どちらも古いインドの知識文化の中で育ちました。季節、時間、宇宙と人間の関係を考える点で、両者が交わる場面もあります。

しかし、最初から一つの制度として存在したわけではなく、同じものでもありません。

ジョーティッシュの出生図から、病気を医学的に診断できるという科学的根拠はありません。治療の開始時期や薬草の採取時期を天体と結びつける伝統があったとしても、それは歴史・文化としての記述と、現代医学の効果判定を分けて扱う必要があります。

星が病気を治す、と書くのではない。

かつて人は、身体の時間を、昼夜、季節、月、さらに大きな天体の動きの中に置いて眺めた。その世界の見方を知ることはできます。

好きでいるために、確かめる

アーユルヴェーダを現代に持ち帰るとき、古典に書かれたことをすべて実践する必要はありません。

高価な製品を買うことも、体質診断に自分を閉じ込めることも、必要な医療を遠ざけることもありません。

一方で、身体が季節によって変わること。食べものは量や成分だけでなく、受け取る側の状態にも左右されること。眠り、休み、触れることが暮らしの一部であること。

そうした視点は、今の生活の中でも考えることができます。

すべてを完璧に実践しなくてもいい。少し不思議な知恵を面白がり、今の身体に合いそうな視点を一つだけ借りてみる。合わなければ戻してもいい。その余裕まで含めて、Vayuはアーユルヴェーダを好きでいたいと思っています。

古い知恵を尊重することと、確かめることは対立しません。

むしろ、大切にしたいものだからこそ、誇張せずに見たい。

アーユルヴェーダを、奇跡の治療法にも、雰囲気だけのセルフケアにもしたくない。身体を暮らしの中に置き、季節や時間とともに眺める、その思想の豊かさを損なわずに伝えたい。それがVayuの立場です。

分からないことを、分からないままにしておく。研究があるものは、その限界まで読む。自分の身体に関わることは、効きそうな言葉より安全を先に置く。

アーユルヴェーダを今読むということは、信じる対象を探すことではなく、長く続いてきた身体の見方と、現在の知識との間に、自分の目で境界線を引くことなのだと思います。


参考資料

この記事は、アーユルヴェーダをめぐる研究と安全性を紹介するもので、診断、治療、製品の使用を勧めるものではありません。服薬中、妊娠・授乳中、持病がある場合などは、ハーブや海外製品を使用する前に医師・薬剤師へご相談ください。体調に異変がある場合は、必要な医療を優先してください。

お時間あれば、もう少し。

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