頼らずに生きることは、できるのだろうか

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時計、交通カード、カップ、ノート、ヘッドホン、鍵を淡い水色の線でつないだ明るい静物写真
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依存という状態を、考えてみるA MAP OF SUPPORTS

人が何かに頼ることと、病気になること。そのあいだにあるものを、暮らしの中から考えます。

朝、目を覚ますための時計。

駅まで運んでくれるバス。仕事の合間に飲むコーヒー。疲れた日に聴く音楽。何も言わずに話を聞いてくれる人。

一日を振り返ってみると、暮らしはたくさんの「頼ること」でできています。

それなのに、依存という言葉には、ときどき弱さや未熟さのような響きがまとわりつきます。「人に頼らず、自分の力で生きること」が、よい生き方のように語られることもあります。

けれど、本当に、誰にも何にも頼らずに生きることはできるのでしょうか。

暮らしは、たくさんの
「頼ること」でできている。

DEPENDENCE IS ALSO PART OF EVERYDAY LIFE

01OBSERVATION
目次

「頼る」は、暮らしの中に散らばっている

人とつながることは、気分の問題だけではありません。

WHOは2025年、孤独や社会的孤立が心身の健康に関わることを報告し、社会的なつながりを健康の大切な一部として位置づけました。

誰かの助けを借りること。安心して戻れる場所があること。道具や制度に支えられること。そうしたものは、人が暮らしていくための土台でもあります。

日常会話では、甘いものが好きなことや、毎晩ドラマを見ることにも「依存している」という言葉を使います。この使い方が間違いというわけではありません。

ただし、日常語としての依存と、医療や支援が必要になる依存症は、同じものではありません。

02BOUNDARY

どこから、病気と呼ばれるのだろう

厚生労働省は依存症を、特定の物質や行為を「やめたくても、やめられない」状態として説明しています。

診断は専門家が、それぞれの対象に応じた基準で行います。単に回数が多いことや、長い時間を使っていることだけで決まるものではありません。

本人や家族が苦痛を感じているか。健康、お金、睡眠、仕事や学校、人との関係に困りごとが生じているか。それでも自分では調整することが難しくなっているか。そうしたことを、いくつも重ねて見ていきます。

好きで繰り返していることと、やめたいのにやめられず、暮らしが少しずつ狭くなっていくこと。その違いは、外から見える量だけでは測れません。

同じ一杯のお酒でも、食事を楽しむ時間になる人もいれば、飲まないと一日を終えられない人もいます。

同じゲームでも、友人と過ごす場所になる人もいれば、眠ることや学校へ行くことが難しくなる人もいます。

対象の名前だけを見て、「よい依存」「悪い依存」と分けることはできないのです。

外から見える量だけでは、測れない。

THE BOUNDARY IS NOT A SINGLE NUMBER

03CHOICES

頼りたいのに、選べるものが少ないとき

何か一つだけが、つらさを和らげてくれる。

そのような状態では、それを手放すよう言われても、ほかにどこへ向かえばよいのかわからないことがあります。

「依存先を増やせばよい」と語られることがあります。たしかに、一つの支えが使えないとき、別の扉が残っていることは助けになります。

けれど、頼れる先は本人の工夫だけで増やせるとは限りません。

住まい。収入。医療。友人や家族。安心して過ごせる場所。相談したときに拒まれないこと。

依存症からの回復を考える研究には、健康や住まい、人間関係、地域の支援など、その人が使える力や資源を「回復資源」として捉える見方があります。回復を本人の決意だけに任せず、選べる道を周囲や社会も一緒につくろうとする考え方です。

「どうしてやめられないのか」と問うだけでは見えなかったものが、「ほかに頼れるものはあるだろうか」と問い直すことで、少し見えてくるかもしれません。

AN INDEX OF SUPPORTS

  • 住まい
  • 収入
  • 医療
  • 友人
  • 家族
  • 居場所
04INDEPENDENCE

自立は、何にも頼らないことだろうか

自立を、誰の手も借りないことだと考えると、人は助けを求めにくくなります。困りごとが深くなるまで、ひとりで耐えてしまうこともあります。

反対に、自分で選びながら、必要なものに頼れることも、自立の一部と考えられます。

今日は友人に話す。明日は専門機関に相談する。疲れたときは休む。一つの支えが使えなくなったとき、別の場所へ向かう。

そうして暮らしを守ることは、弱さではないはずです。

目指すのは、依存をすべてなくした人になることではなく、何かに頼ることで、自分や身近な人の生活が狭くなっていないかを、ときどき確かめられることなのかもしれません。

あなたの今日を支えているものは、いくつ思い浮かぶでしょうか。

REFERENCE NOTES

この記事をつくる際に参照した資料

OFFICIAL REFERENCE依存症についてもっと知りたい方へ依存症を「やめたくても、やめられない」状態として説明し、本人や家族の苦痛、生活への影響から捉える考え方を紹介する公式ページです。厚生労働省
OFFICIAL REFERENCEFrom loneliness to social connection: charting a path to healthier societies孤独や社会的孤立と健康の関わりを示し、社会的なつながりを健康施策の柱として位置づけた報告書です(英語)。World Health Organization(2025)
REFERENCEMeasuring recovery capital for people recovering from alcohol and drug addiction: A systematic review健康、住まい、人間関係、地域の支援など、回復に使える資源をまとめて捉える「回復資源」の考え方を整理したレビューです(英語)。Bunaciu et al.

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