オーガニックとは何か——身体によさそう、だけではない「作り方」の話

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スーパーの棚で、「オーガニック」と書かれた食品を見かけることが増えました。 淡い色の包装。土や葉を思わせるデザイン。少し高い値段。 オーガニックという言葉には、身体によさそうで、自然に近く、丁寧に作られたもの、という空気があります。 けれど、そもそもオーガニックとは何なのでしょう。 農薬をまったく使っていないことなのか。栄養が多いことなのか。自然のままに育てることなのか。 調べてみると、それは一つの食品の性質というよりも、食べものが生まれるまでの過程に設けられた、いくつもの約束でした。
市場に並ぶ色とりどりの野菜
棚に並ぶ野菜から、その手前にある畑へ。Photo: Shelley Pauls / Unsplash
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日本では「オーガニック」と「有機」は同じもの

日本の食品表示では、「オーガニック」と「有機」は同じ意味で使われています。 農産物や畜産物、加工食品などを「有機」または「オーガニック」と表示して販売するには、定められた基準に沿って生産・管理され、登録認証機関の検査を受けなければなりません。 その印が、太陽と雲と植物を組み合わせたような「有機JASマーク」です。 マークのない農産物や加工食品に「有機」「オーガニック」と表示することは、法律で禁じられています。 つまりオーガニックは、なんとなく自然らしいものにつけられる形容詞ではありません。 少なくとも食品の世界では、基準と記録と第三者による確認を伴う言葉です。

「農薬を一切使わない」という意味ではない

有機農産物は、堆肥などを使って土を育て、化学肥料や化学合成農薬に頼らないことを基本としています。 種をまいたり苗を植えたりする前から、原則として二年以上、禁止された農薬や化学肥料を使っていない畑で育てること。遺伝子組換え技術を使わないこと。周囲の畑から使用禁止資材が飛んだり流れ込んだりしないよう、必要な対策を取ること。 育てている期間だけではなく、その前の土の時間まで問われます。 ただし、「有機なら農薬は一切使われていない」と考えるのは正確ではありません。 まずは耕し方や品種の選択、物理的な除去、天敵の利用などで病害虫を防ぎます。それでも農産物に重大な被害が生じるおそれがある場合には、有機JASで認められた一部の資材を使用できることがあります。 オーガニックは、何もしない農業ではありません。 自然に任せきるのでもなく、虫も病気も人の手で完全に制圧するのでもない。その土地の循環をできるだけ壊さず、必要なときには決められた方法で手を入れる。 その境界を、細かく考え続ける農業です。
土のついた両手
オーガニックが見ているのは、収穫されたものだけではなく、その前にある土の時間でもある。Photo: Kampus Production / Pexels

「無農薬」や「特別栽培」とも違う

よく似た言葉に、「無農薬」や「特別栽培」があります。 けれど、これらはオーガニックと同じではありません。 農林水産省のガイドラインでは、「無農薬」という表示は使わず、「農薬:栽培期間中不使用」などと表示することになっています。農薬を使わずに育てても、以前から土に残っていたり、周囲の畑から飛んできたりする可能性があるためです。 「特別栽培」は、その地域で一般的に行われている栽培と比べて、化学合成農薬の使用回数と化学肥料の窒素成分量を原則として半分以下に抑えたものを指します。 認証を取得していない小さな農家が、農薬や化学肥料に頼らず、非常に丁寧に作っていることもあります。 反対に、有機JASマークがあるからといって、生産者の考え方や土地の事情まで、すべて一つになるわけではありません。 マークは大切な入口です。 けれど、マークだけですべてが分かるわけでもないのです。

オーガニックは、栄養価の保証ではない

では、オーガニック食品は、普通の食品より身体によいのでしょうか。 現在までの研究では、オーガニック食品を選ぶことで、食事を通じた農薬への曝露が少なくなる傾向は比較的一貫して確認されています。 一方、オーガニック食品のほうが明らかに栄養価が高い、あるいは特定の病気を防ぐとまでは、まだ言い切れません。 健康との関係を調べた研究はありますが、日常的にオーガニック食品を選ぶ人は、食事全体や運動、所得、生活習慣なども異なる可能性があります。観察された健康差が、オーガニック食品そのものによるものなのかを切り分けるのは簡単ではありません。 オーガニックは「これを食べれば健康になれる」という効能表示ではありません。 一つの食品の栄養素だけを見るより、どのような環境で、どのような方法で作られたかを見るための言葉に近いのだと思います。

一枚の葉ではなく、畑全体を見る

世界の有機農業運動を支えてきたIFOAMは、有機農業を、土壌、生態系、人々の健やかさを支える生産システムと定義しています。 そこで重視されるのは、健康、生態系、公正、そして配慮です。 土を痩せさせないこと。水を汚しにくいこと。虫や微生物を含む生態系を保つこと。動物をどのように飼うか。作る人がどのように働くか。そして、その土地を次の世代へどう渡すか。 一個のトマトだけを見て、「こちらのほうが栄養が多い」と比べるだけでは、オーガニックが見ようとしてきたものの一部しか捉えられません。 見ているのは、トマトの後ろにある畑です。 さらにその下の土、その周囲の水、そこにいる虫や鳥、作る人の時間までを、一つのつながりとして考えようとしています。

高いものを、すべて選ばなくてもいい

オーガニック食品は、一般の食品より高価になることがあります。 手間がかかる。収穫量が安定しにくい。認証や記録のための費用も必要になる。 大切だと分かっても、すべてをオーガニックに替えることは難しい人もいます。 だから、完全でなくていいのだと思います。 よく食べるものだけ選ぶ。生産者の話を読んでみる。旬の野菜を買う。近くで作られたものを手に取る。オーガニックではなくても、栽培方法が書かれていれば少し眺めてみる。 反対に、値段や認証にかかわらず、まず野菜や果物を食べること自体も大切です。 「全部できないなら意味がない」と考えると、食卓はすぐに窮屈になります。 オーガニックは、自分の正しさを証明するためのものではありません。 買えない人や、選ばない人を責めるための言葉でもありません。

食べものの手前にある時間を想像する

有機JASマークのついた人参も、そうでない人参も、見た目だけでは作られ方が分からないことがあります。 けれど、オーガニックという言葉を知ると、食べものの手前にある時間を少し想像できるようになります。 この土は、どのように保たれてきたのか。 虫や病気と、どう折り合ってきたのか。 誰が育て、どんな記録を残し、ここまで運んできたのか。 オーガニックとは、自然そのものを意味する言葉ではありません。 人間が自然の外側に立つのではなく、その循環の中で食べものを作るにはどうすればよいか。そのために設けられた、不完全だけれど具体的な約束です。 棚の小さなマークから、畑全体を想像してみる。 オーガニックを知ることは、まずそこから始まるのかもしれません。

参考資料

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